映像・動画制作の極意

映像制作会社の選び方

■映像を制作する会社の種類

  1. ●メディアとの連携に強いのは「広告代理店」「放送局」「放送局関連会社」
  2. ●教育・啓蒙に強いのは「教育・研修機関・コンサルティング企業」「出版社」
  3. ●映画・音楽に強いのは「映画配給会社」(映画関連会社等を含む)「レコード会社」「タレントプロダクション(音楽出版会社等含)」
  4. ●アニメーションやイラスト、CG制作に強いのは「アニメーション会社」「イラスト制作会社」
  5. ●Webやシステム(プログラム)デザインに強いのは「Web制作会社」「デザイン会社」「IT関連企業」
  6. ●企業用映像・動画制作(企業VP)に強いのは「総合制作プロダクション(大手プロダクションや印刷会社等)」「映像制作プロダクション(専門)」
  7. ●映像技術(撮影や編集)に強いのは「撮影技術会社」「ポストプロダクション(編集技術会社)」


・・・という具合に、映像を制作する会社によって制作物が変わってきます。

映像制作の相関図

基本的に映像制作関連の企業の多くは専門企業です。独立企業として専門職ごとに会社・組織が細かく分かれているのが一般的です。専門企業同士で相互間協力を行っているのが映像業界の特長です。また会社に縛られず制作活動をしたいフリースタッフや、大きな会社から独立した小規模な制作会社、技術会社が多いのも特長です。
制作を依頼する場合は、大きくは代理店・制作会社へ協力企業として発注するか、必要に応じて専門会社へ直接発注するかの2つの流れがあります。どちらを選ぶかでその制作体制が変わってきます。


制作会社はすべてを統括し、多方面にリレーションを持っているのでさまざま形態の制作ができるといっても過言ではありません。撮影・編集技術会社は専門性の高い技術に専念していますので、シナリオやディレクターなどの協力会社やフリーの制作スタッフが必要な場合は、必要な時にプロジェクトに入ってもらい制作を行っています。
制作でワンストップという体制が一人歩きしていますが、個人でディレクション、撮影、編集をして作品を完成させるという意味で使われているようです。これを企業経営に置き換えると、1社で完結することはすべての職種の人材を抱えることを意味します。その場合、職種によって仕事量のピーク、オフピークに大きな差があり、スタッフ全てを雇用し続けることは難くなります。
制作スタッフは1作品当たり1~3か月という具合に拘束期間が長くなり、様々なプロジェクトを同時並行的に動かしていきます。そのため年間にできる作品数は限定されることになります。そのプロジェクトから発生する撮影スタッフや編集スタッフの可動は少なく、1作品あたり数日で終わってしまうので、撮影スタッフや編集スタッフを雇用することは非効率となります。撮影編集の技術系の会社が独立会社となれば自社だけなく様々なところへで受注活動ができるようになり、経営を維持できるようになります。
そのため制作会社と撮影・編集技術会社が2つに分かれることになりました。また、制作スタッフと技術スタッフは「お互いが切磋琢磨をして、表現力、技術力を向上させるためには、両者を分離した方が良い作品できる」という歴史もあります。
こうした背景もあって、独立系の専門プロダクションや撮影技術会社、ポストプロダクションが分離して増えていきました

どこに発注したらいいか?

従来、企業向け、官公庁向けの動画や広告・宣伝・PR映像制作の制作実務を請け負っていたのが、
「映像制作プロダクション」「撮影技術会社」「ポストプロダクション(編集技術会社)」でしたが、ICTやDXの普及に伴って、デザイン会社やWeb制作会社、一般企業等の新規参入が相次ぎ市場が混とんとしているのが現状です。どこに発注するかは、どういう動画コンテンツするか方針を決定し、その上で得意分野、制作体制、予算等をあらかじめ確認するとこからスタートとなります。

発注の基準



以上が基本的な項目ですが、官公庁や企業向け映像・動画 教育映像やPR動画、B2C向け動画の制作する場合は以下の点を確認します。

確認事項

  1. ●与えられたテーマについて資料を渡さないでも、調査リサーチする能力があり、提案することができる(訴求ポイントの把握、理解力があるかどうか)
  2. ●映像制作にプロデューサー、ディレクターと制作スタッフの必要かどうか
  3. ●構成・脚本・シナリオ(絵コンテ等)が必要か
  4. ●取材の場合の体制の確認(取材方法やインタビューなど扱い方・編集の仕方)
  5. ●撮影場所の選定ができるか(スタジオやロケーションの手配)
  6. ●出演者(著名人・俳優・声優・ナレーター等)のリサーチ・アテンド、現場管理能力(オーディション実施、プロダクションとのコミュニケーション等)
  7. ●アニメーションやCG、デザイン(PPTや図表、イラスト等)美術(スタジオセット)等へのプロデュース、ディレクション能力
  8. ●SNSやYouTube等のメディア連携やオンライン中継等ができるかどうか


プロデューサー、ディレクター・制作スタッフが必要であれば「総合制作プロダクション」「映像制作プロダクション」ということになります。

■「総合制作プロダクション」「映像制作プロダクション」の選び方

  1. ●「映像制作プロダクション」は「広告代理店」や「出版社」「放送局」「教育・研修機関・コンサルティング企業」「印刷会社」等のパートナーとして制作チーム編成をして制作するケースが多々あります。
  2. ●「映像制作プロダクション」の中にはTV番組を得意とする会社と企業VPを得意とする会社があります。
  3. ●企業VPでは、ディレクターが構成や台本が書けることが条件となり、TV番組のディレクターにはできないことが多い。そのため企業用映像を発注するためには「映像制作プロダクション」でも企画・構成・脚本(シナリオ)ができるかというのが制作会社選択の基準の一つとなります。
  4. ●制作コストやクオリティーについては設備(撮影機材や編集機材)を自社所有しているか。
  5. ●多くのブレーンやフリーススタッフや協力会社とリレーションがあるかなども重要なポイントとなります。
  6. ●「撮影技術会社」「ポストプロダクション(編集技術会社)」「デザイン会社」には映像専門のディレクターや制作スタッフはいないのがほとんどなので、協力先としてフリーディレクター、フリープロデューサー(制作進行含む)などや「映像制作プロダクション」にディレクションと制作進行を依頼することが多いのが実情です。
  7. ●「映像制作プロダクション」の多くが技術専門の会社と提携をし「撮影技術会社」「ポストプロダクション(編集技術会社)」「デザイン会社」に専門外の部分でパートナーとして依頼をしています。この全機能を持っているのが「総合制作プロダクション」となります。

■「撮影技術会社」は撮影のプロ・「ポストプロダクション(編集技術会社)」は編集のプロ

指示監督する人(ディレクター)なしでは撮影や編集ができません。構成シナリオを書き、撮影の対象物を決め、プラニングし、プロデュース、ディレクションができれば、直接発注することができます。とは言っても、組織で動く会社ですのでコストはそれなりにかかることになります。

低価格制作の場合

どうしても低価格で動画を制作したいということになれば「映像制作プロダクション」は向いていません。スタッフを組織的に動かしていきますので制作に関わるセットアップ費用がどうしてもかかります。企画費(企画構成・シナリオ・リサーチ・メディア連携等)や制作管理費といったものが発生します。またプロデューサー(制作進行)とディレクターが役割分担を行い二人三脚で制作実務を実行していきますのでどうしても基本制作費はアップすることになります。


本当に低価格ということであればフリースタッフに直接依頼するということが良いでしょう。フリースタッフの中にはマルチプレイヤーがいます。ディレクターで撮影ができれば、カメラマンでディレクションと編集ができれば、ワンオペになるので、ワンストップ制作が可能になります。コストは個人ですので交渉次第ということになります。
 

YouTuberはこの分野の人材ということになります。しかし大がかりな制作はできない、連携が必要な制作は個人の能力次第で変わるため、クオリティーが担保できるかどうかは別問題となります。
SNS用のちょっとしたPR、シナリオ、台本なしで撮影編集だけで完成させたい。イメージだけで完成させたい場合は合わせて考えてみてもいいでしょう。(売れっ子はギャラが高いので注意が必要)

CM制作について

「広告代理店」のパートナーとして「CM制作会社」「イベント制作会社」という専門会社が存在します。メディアやタレント、美術セット、ロケーションセットなど大掛かりになり、一般的に企業PRと桁違いのコストになります。広告代理店や専門会社にお任せしたほうがクオリティーや効果は間違いはありませんが、一般の「映像制作プロダクション」でも制作可能な会社もありますので相談してください。

以上のことを踏まえると、オールマイティーな制作会社は存在しません。
どんな制作会社にも得手不得手はあります。まずは、制作会社の得意分野が制作目的に敵うかどうかを検討する。どんな映像を制作するのか制作条件(要件定義)を作成、見積を依頼する。その上で品質と費用対効果を見極めて発注することがポイントとなります。

映像・動画制作あるある失敗とその原因

長い・伝える優先順位を決めましたか?
・細部まで説明しようとしていませんか?
・余計なシーンは多くないですか?
・他のメディア(紙媒体など)との棲み分けはできていますか?
わかりづらい・客観的な視点や視聴者目線を忘れてませんか?
・専門用語が多すぎませんか?
・テロップが多すぎませんか?
・音声(言葉)がきちんと録れていますか?
見た目が悪い
印象に残らない
(仕上がりが悪い)
・内容にあった撮影ができない(素材収集ができない、技術がない、センスがない)
・カメラを動かし過ぎていませんか?(ズームやパーンの多用は禁物)
・編集を考慮して撮影できましたか?
・編集の経験値・技術力・ノウハウ・センスがない
・デザインやトーン、カラー、文字の使い方や効果などの統一感を考えていますか?
・音楽の付け過ぎ
・外注の制作会社の選定が間違っていませんか?(低価格専門業者にクオリティーを求めることはできません)
・低予算で制作会社に発注していませんか?(採算が採れないため、クオリティー維持ができない)
・素材収集とこれをうまく料理するディレクターや制作スタッフがいますか?(ノウハウとセンスが問われる)
・予算のかけ方が違う(どこに制作費をかけるのが効果的なのか検討できていない)
著作権・肖像権などのリスク・映像や音楽、イラスト、写真などの「著作権」や映った人、建物などの「肖像権」を侵害してませんか?
・フリー素材であっても活用方法によっては無料とは限らない
・機密情報や個人情報が映っていませんか?
手間がかかる・撮影の収録時間が長すぎませんか?(多ければそれだけ編集の手間もかかるようになる)
・目的に合った素材収集ができていますか(過去の素材、レンタル、写真、イラスト、資料等の素材収集には手間がかかる)
・映像選びや確認のための時間は考慮していますか?
収録時間が
長い弊害
(撮影・完成時間)
・撮影の収録時間が長すぎませんか?(多ければそれだけ編集の手間もかかるようになる)
・目的に合った素材収集ができていますか(過去の素材、レンタル、写真、イラスト、資料等の素材収集には手間がかかる)
・映像選びや確認のための時間は考慮していますか?
外注費がかかりすぎる
(予算と外注の関係)
・品質に対して過剰な要求でコストアップしてませんか
・シナリオ確定後、何回ものリテイク・修正をしてませんか
・予算確定後、工数が増大する追加要求をしていませんか
・完成時間が長くなっていませんか。
・盛り込む内容や「いつ・誰に・何を・何のために伝えるのか」明確になっていますか
・シナリオをチェックし権限者の許諾を得ていますか。
・構成やシナリオ、撮影、ナレーション等を何回も差し戻していませんか。
・シナリオから逸脱したチェックや修正に対して先祖返りをしていませんか。
・構成やシナリオにないこと内容を撮影や編集で要求していませんか。
・撮影の段取りが悪くありませんか。
・撮影場所が多すぎませんか。撮影の移動時間を計算していますか。
・シナリオやデザイン、CG、編集試写版を何案も提出させていませんか。(選択や権限移譲ができていないため。)
・テロップや図表などの文字が多すぎませんか。
・アニメーションやCGを使い過ぎていませんか。
・映像で表現できないものをイラストや図表、CGに置き換えていませんか。
・映像に凝り過ぎていませんか・・・デザインやイメージに対し過剰な要求をしていませんか。
・音楽に対して過剰な要求をしていませんか
・出演者が多すぎませんか。
・DVDメニューなどへの過剰な要求していませんか

これらは制作会社や外注業者にとってコストアップの要因となっています。

プロとアマの違い

プロアマ
プリプロ段階企画経験値が多く、費用対効果で映像表現する内容を提案できる採算性を度外視した企画を立案する傾向にある
構成訴求内容を絞り、起承転結型やオムニバス型の構成や見せる順番など、テーマにあった構成を提案できる。てんこ盛り状態で内容過多。整理が付かず、無駄が多く、見せる順番もしっくりしない傾向にある
シナリオ
(ナレーション)
ナレーション(解説など)でのメリハリのある文書表現(単文、リズム)と映像マッチングを常にどうするか考えて作成できる。映像部分は関係なしに、解説したい部分を文章化し、長文、連文で映像とのマッチングが難しい傾向にある
スケジュール管理無駄を排除した段取りで全体を管理し、短納期化を図ることができる。工数や日数が多くかかってしまう。無駄も多い。
ブレーンワークアイディアも経験も豊富な各セクションの専門スタッフがプロジェクトチームを組み、常に品質を考えた制作を行うことができる。映像知識のある特定の人が行うため、作品の質が個人の能力で決まってしまう。
演出(監督)映像表現手法にたけ、内容に即した演出技法で表現することができる。経験値が不足しているため作品にまとまりがなかったりする傾向にある。
撮影段階撮影技術アングルや画角、サイズなど映像のフレームを作れること
カメラワークができ、表現が豊かなことくっきりと綺麗に撮影する技術、音声をとるため技術、暗いところでとるための技術がある。
映像は撮影できるが音声がまともに録れなかったり、暗かったり、ブレたり、安定感のない映像になってしまう傾向にある。
出演者同じ動作を繰り返し行ったり、台詞を覚えて表現する。同じ動作が難しく、台詞はぎこちなくなる。
制作進行制作は現場をスムーズに進行させるための準備作業を常に行い、タイムスケジュール通りに進めて行くことができる時間まかせ、人任せになるので時間どおりに終わらないことがある。
編集段階編集シナリオに合わせ、効率よく編集。
デザイン性を重視したり、効果を挿入したり、内容に合わせた表現ができる。カットを大切にし、効果も意味合いを考えた使い方をする。
編集技術が伴わないため思ったような作品に仕上がらない傾向にある。効果が使えると何でも効果を入れてしまう傾向にある。
録音段階MAナレーションや、音楽効果の入れどころを検討し、効果的な音声を制作することができる。聞きやすい音声トラックが制作できる。音楽や効果にメリハリがないものが多い。ナレーションや台詞が聞きづらいものが多い。
ナレーター意味を伝える、訴求ポイントが伝えることや情緒的な表現もできる
わかりやすい日本語表現ができる。
ぎこちない語り口、わかりずらい日本語になる傾向にある。


プロの知識・経験値を活用することで制作のクオリティーが上がる

費用対効果、スケジュール管理等のマネジメントで制作がスムーズになる

撮影・編集で注意すること

ドラマ仕立て

ドキュメンタリー(インタビュー・取材)仕立て

キャスターや講師の解説仕立て

スパーテロップ(文字)や説明図の編集

特殊効果編集

ナレーション部分の映像編集

音楽効果(選曲)編集

ワンストップ型(個人依存型ローコスト)制作と
ブレインワーク型制作の違い

イージーオーダーや吊るしの洋服感覚の制作で工数をかけない大量生産方式で
専門家やクリエイティビティーをなるべく排除し、カメラと編集ソフトさえ扱えれば、
誰でも制作できる体制で行う制作会社が増えています。

ローコスト制作はテンプレートやアリ素材を活用して制作するためオリジナル性に乏しく、
お客様の思った映像にならないケースがある。

チェックの目を持たないため、完成度がどうしても低くなりがちで、
カスタマイズすると、追加の予算が発生するケースが多い。

ローコスト制作で注意すべきこと

ローコストで映像制作するためには演出方法を考える

制作ノウハウ

動画制作の内製化とアウトソーシングを使い分ける

動画制作内製化のポイント

教育動画コンテンツの多様化

役に立つ動画コンテンツ制作の考え方

教育映像コンテンツ制作の考え方

インタビュー映像や取材映像コンテンツの考え方

専門分野のコンテンツ制作の考え方

小型デジタルカメラの有効活用

PR動画コンテンツの考え方(商品PR)

制作工程基本フロー

制作スケジュールの立て方

企画の立て方とシナリオ難易度

構成案のサンプル

撮影(カメラ・照明・音声)セッティングのポイント

編集の工程と流れ

企画制作TIPS